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INTERVIEW

ものづくりに込めた想いを
消費者に伝えるために

ブランドプロデューサー 柴田陽子氏

— 後編 —

グランツリー武蔵小杉などさまざまな事業のプロデュースだけでなく、自らものづくりも行う柴田氏。
消費者にとって魅力的なブランドを構築するための戦略をお伺いし、
「ANA SOCIAL GOODS」が提案する「これからの豊かさ」の可能性を探ります。

聞き手:安住紀宏 (lefthands) / フォトグラファー:大畑陽子

2019.09

すべてに理由を探すこと

ー 前編は、柴田さんが柴田陽子事務所で手がけていらっしゃる事業についてお話しいただきました。後編では、柴田さんのお仕事における理念をお伺いしつつ、「ANA SOCIAL GOODS」が提案する「これからの豊かさ」について考えてみたいと思います。では、まずクライアントに提案する際に心がけていらっしゃることを教えていただけますか?

柴田:第一に、クライアントのご希望から、テーマや文化、企業風土に見合う要素を見つけることが条件です。そこから、それまで行なってこられた事業からテイストを分析したうえで、新しいプロジェクトを提案します。問題は、それがユーザーに受け入れられるものでなければならないということです。

ー クライアントとユーザー、その双方にとって良いものを作ることの大変さは、どういった場面で感じますか?

柴田:クライアント様は、こういうものを作りたいという想いを持っていらっしゃいます。ですが、例えばその表現方法が今の若い人に受け入れられるものではないような場合は、それを理解してもらう必要があります。もちろん、想いというのはその方が描いている夢でもあるわけですから、程度を測って入れ込んでいくことも必要です。

ー コミュニケーションを取り合うことが大事になってきますね。

柴田:そうですね。ただ、重要なのはコミュニケーションの量ではなく質です。つまり、誠意を持って相手企業のことをよく学び、その想いも考えも歴史もすべて理解したうえで、私から見たらこのように思いますという意見を伝えることが肝要です。

ー 訴求したい顧客層のニーズというのは、どのようにして掴んでいらっしゃいますか?

柴田:常に消費動向を追って、消費者の優先順位や時間の使い方などを把握することが大事だと思います。流行っているものをチェックしたり、ヒットを生み出すクリエイターに話を聞いたり、結果を出している経営者に話を聞く。そういった日々の積み重ねによって、時代を読む目を養うよう心がけています。

ー スタッフの皆さんに「こういうところに気をつけるように」と伝えていらっしゃることはありますか?

柴田:「すべてに理由を探すこと、鮭のように源流に向かっていくこと」を心がけるように伝えています。例えばAという商品が流行っていることに気が付いたとしたら、それだけで満足してはいけない。なぜ、誰に、どのような場所で流行っているのか? Bだったら流行らないのか? 流行っていても事業としてはどうなのか? ひとつの気付きだけにとどめるのではなく、ポイントとなる要素に遡って、源流を捉える習慣を身に付けることが重要です。

ー トレンドには、具体的な理由がなく何となくの気分というところもありますよね。

柴田:トレンドはあまり意識していません。理由のないものがトレンドであるとも言えるからです。

ー なるほど。そして、理由がないからこそ一過性のトレンドで終わってしまうということでしょうか?

柴田:そういう考え方もできると思います。ただ理由があったとしても、それを人にうまく伝えられなかったり、時間が経つにつれて伝え続けていくことができなくなったら、消費者に受け入れてもらえなくなってしまいます。

柴田氏
BORDERS at BALCONY

「ANA SOCIAL GOODS」ではマイルを使用して商品を買うこともできる。

三方良しの価値観を消費者に伝えるために

ー ここまでは、柴田さんがブランディングにおいて心がけていらっしゃることをお伺いしました。ここからは、「ANA SOCIAL GOODS」が提案する「これからの豊かさ」について検討していきます。

柴田:「豊かさ」とひとことで言っても、様々なものが考えられると思います。まず大前提として、こういう価値観でものを選ぶことが「これからの豊かさ」であるという定義付けをして、それを消費者に説得していくことが重要です。「ANA SOCIAL GOODS」の「これからの豊かさ」は、三方良しということですよね。

ー 柴田さんが手がけていらっしゃるアパレルブランド「BORDERS at BALCONY」は、どういった方針のうえに成り立っているのでしょうか?

柴田:私のブランドには、まず「洋服を着ることで自分を表現して、自信を持って生活する喜びを味わってほしい」という価値観があります。お客様に服を気に入っていただけたら、そこから、誰が作っているのか興味を持っていただけるかもしれません。そのうえで、地方の生産者の皆さんと作っているというストーリーを知ってもらうことになります。つまり、様々な段階の価値観があり、それを一つひとつ順序立てて消費者に伝えていかなければならないのです。この順序を間違えて、最初から地方の生産者と作っているから買ってほしいとアピールしても、自己満足的な押し売りになってしまうと思います。

ー 三方良しでいうところの、消費者にとって良い、生産者にとって良い、そして社会にとって良いという3つの価値観を、段階を踏んで消費者に知ってもらうということですね。

柴田:そうですね。物を買う喜びに加えて、もうひとつ新しい喜びを得たいですか? と聞かれれば、誰しもが頷くのではないでしょうか。そこから、どんなタイプの価値観に共感するかというのは様々なケースが想定できると思います。ギフトを贈ることで、自分の身近な人を幸せにするという喜びかもしれません。あるいは環境保全に貢献することで得られる喜びかもしれません。後者であれば、「ANA SOCIAL GOODS」が提案する「これからの豊かさ」に繋がりますよね。

ー 「ANA SOCIAL GOODS」で紹介している商品の一例として、廃車になった自動車のエアバッグを再利用したカバン「AIRBACK」があります。エアバッグは取り出すのが難しく、ほとんど再利用されることなく破棄されるそうです。また、命を守るための装備なので、当然頑丈にできていますし、特殊な縫製が施されています。ですが、そういった面が逆に再加工を難しくしている。

柴田:確かな安全性を備えているからこそ再利用しにくいというのは残念ですね。

ー 耐久性が強くて破れにくいというエアバッグの性質に着目し、再利用しようと考えたのがリバースプロジェクトの「AIRBACK」です。結果、カバンの内装に使うというアイデアが生まれました。また、ANAとのコラボレーションとして、機体のシートベルトのバックルを使ったり、バッグブランドのマスターピースともコラボレーションして、デザインにもこだわりが見られます。

柴田:航空会社ならではのストーリーがあるのですね。社会にいいというだけでなく、まずバッグとしての完成度が高いというのは、非常に魅力的だと思います。

ー エアバッグの再利用という社会への貢献に加え、デザインという面でも消費者にとっての喜びに繋がる。クリエイティブな視点から社会課題の解決に挑む、リバースプロジェクトらしい商品になっていますね。「ANA SOCIAL GOODS」が紹介しているのは、こういった三方良しの商品です。精神的に豊かになるだけでなく、もちろんそこには物としての価値もある。その両面が追求された商品こそが「これからの豊かさ」を提供していくのではないでしょうか。

柴田:そういった意味では、これまでも旅という体験的な豊かさを安心・安全に提供してきたANAという企業が、「これからの豊かさ」を提案していることは、大きな意義があると思います。旅行も、物質的な豊かさとは違う、体験という価値ですよね。私も以前であれば、例えば腕時計が欲しいと思ったかもしれませんが、今はそのお金で友人と旅行したいと思うようになりました。私の現在のモチベーションは、自分の物を買うよりも、社員旅行で様々な場所に行けるような会社になりたいということですね。

ー 素敵ですね。では、最後に今後の目標を教えていただけますか?

柴田:私は、「働くことは生きること」と考えています。女性が多いこの会社で、皆がいきいきと働くことができる環境作りに励みたいです。そして、社会にあって良かったなと思われるようなものをこれからも作り続けて、結果を残し続けていった先に、女性の働き方の見本となるような小さなブティックカンパニーになれたらいいですね。

柴田氏

柴田 陽子

Yoko Shibata

ブランドプロデューサー 柴田陽子事務所 代表取締役
外食企業にて新規業態開発を担当した後、化粧品会社でのサロン業態開発などを経て、2004年「柴田陽子事務所」を設立。
コーポレートブランディング • 店舗開発 • 商品開発など多技に渡るコンサルティング業務を請け負う。 セブン&アイ・ホールディングス「グランツリー武蔵小杉」総合プロデューサー、ミラノ国際博覧会日本館レストランプロデューサーを務める他、パレスホテル東京、東京會舘など、幅広くブランディングに携わる。

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