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INTERVIEW

野沢温泉村を好きになってもらうために
—— 遊びを地域創生につなげる

nozawa green field代表 河野健児氏

— 前編 —

スキークロスの日本代表選手として、ワールドカップでも活躍してきた河野健児氏。
現在は地元・野沢温泉村でスキーヤーとして活動しつつ、
nozawa green fieldの代表や観光協会の理事など、様々な立場でまちづくりに携わる河野氏に、
地域創生の展望やふるさと納税の可能性についてお伺いします。

聞き手:安住紀宏(lefthands) / フォトグラファー:川口賢典(stoique) / 編集:大野重和(lefthands)

2019.12

スキークロスで世界を相手に戦っていた日々

ー 地域活性化⽀援を目的に、ANAでは「ANAのふるさと納税」サイトを運営しています。「寄附先の⾃治体へ実際に⾜を運んでいただきたい」という想いから、寄附額に応じてマイルが貯まるという航空会社ならではの取り組みが特徴です。そこで今回は、地元・野沢温泉村でnozawa green field代表として、そして観光協会の理事として地域創生に携わっていらっしゃる河野健児さんにお話をお聞きします。まずは、スキープレーヤーとしてのこれまでのキャリアについて教えていただけますでしょうか。

河野氏(以下敬称略):長野県の野沢温泉村で生まれて、小さい頃にスキーを始めました。高校卒業までは、一人ずつゲートをくぐってタイムを競うアルペンスキーという種目をやっていました。その後、一時期、東京で自転車のメッセンジャーをしていたのですが、その頃に先輩に誘われたのがスキークロスを始めたきっかけです。


ー スキークロスというのはどのような種目なのでしょうか?

河野:4人で同時にスタートして着順を競う、レース形式の競技です。アメリカのスポーツ専門チャンネルのESPNが主催しているX-GAMEという大会で、1998年に行われたのが始まりです。その後、2002年に国際スキー連盟のワールドカップの正式種目に加わり、2010年のバンクーバーオリンピックからオリンピックの正式種目になりました。僕は2002年にスキークロスを始めて、2014年まで現役でした。ワールドカップや世界選手権にも出場しましたよ。


ー スキークロスの魅力はどこにあるのでしょうか?

河野:一人一人滑るアルペンスキーは、ゴール後に他の選手とのタイム差が分かります。そのため、スキーをしない人にとっては、選手が滑っている様子を見ても誰が勝っているのかなかなか分かりにくいと思います。一方、スキークロスは4人同時に走るので、誰が速いのかが一目で分かるのが特徴ですね。


ー レースならではの魅力ですね。

河野:そうですね。それに滑る側にとっての面白さもあります。他の3人がどういう特徴の選手なのかを頭に入れつつ、大体1分間の競技時間の中で、常に今自分が何位なのかを把握して瞬時に判断しなきゃいけないんです。


ー 短い中での駆け引きがあるんですね。

河野:例えばソチオリンピックでは、1〜3位がゴール直前で転んでしまって、4位の選手が1位になった男子準々決勝のレースが話題になりましたね。スキークロスの存在は知らなくても、このレースは見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。


ー 現役の頃は、試合や練習などで遠征に行くことも多かったのでしょうか?

河野:スキーはヨーロッパが本場なので、秋などにヨーロッパの氷河に遠征して練習を行うことが多かったですね。ANAもよく利用させていただきました(笑)。一番遠征が多かった時期は、夏にオーストラリアやニュージーランドなどの南半球に行って練習して、10月頃にはスイスのサースフェーという村で3週間ほどトレーニングをしていました。


ー 本当に世界中を飛び回っていらっしゃったんですね。

河野:その後、11月中旬にまたヨーロッパに行って、12月の頭から3月の頭くらいまでワールドカップに参戦、というスケジュールでした。種目によってワールドカップの試合数は違うんですが、スキークロスは年に10〜12戦。例えば、高梨沙羅さんが活躍しているスペシャルジャンプは30試合近くあるのではないでしょうか。それに比べると多いわけではないのですが、それでも多い時で年に5、6回ほど遠征していました。


ー 大会はヨーロッパ以外でも開催されるんですか?

河野:そうですね。ワールドカップはヨーロッパだけで開催されるわけではないので、12月にヨーロッパで2戦を消化して、その足で北米に飛ぶということもありました。その後、正月に日本に帰省していました。


ー 野沢温泉で練習なさることもあったんですか?

河野:ほとんどなかったですね。というのも、スキークロスやアルペンスキーのコースは水を撒いてスケートリンクのように凍らせているんです。一方、野沢温泉は雪がたくさん降るので、雪が柔らかい。1、2月は毎日のように新雪が積もっている状態です。いわゆるパウダースノーという滑りやすいコンディションなのですが、現在は特にインバウンドのお客様がパウダースノーを求めて野沢温泉にお越しになりますね。世界中のいろいろなスキー場に行きましたが、シーズン中の野沢温泉は、良質な雪が降る確率が非常に高いと思います。

自然に触れるバックカントリースキーの魅力

ー では次に、スキークロスの現役を退かれた後についてお話しいただけますか?

河野:THE NORTH FACEと契約して、バックカントリースキーのスキーヤーとして活動しています。また夏季限定ですが、地元野沢温泉でツリーハウスとウッドデッキを楽しめるnozawa green fieldを主催しています。1日1組だけのプライベートキャンプです。そこではスタンドアップパドルボード(SUP)という、サーフボードの上に立ちながら一本のパドルを漕いで進むスポーツも行なっています。ツアーも組んでいて、野沢温泉の近くの北竜湖や千曲川だけでなく、高知県の四万十川に行くこともありますよ。


ー 精力的に様々な活動を行われているんですね。

河野:他にも、野沢温泉村観光協会の理事も務めています。実はそれだけでなくて、国産スキーブランドVECTOR GLIDEの販促マネージャーも務めているんです。それと、PEAKS5というSUPのブランドを立ち上げました。やりたいことをやりたいと思っているうちに、色々と広がっていきました。


ー 順にお伺いしていきましょう。では、まずバックカントリースキーについて教えていただけますか?

河野:山を登って、整備されていない場所(バックカントリー)を滑るのがバックカントリースキーです。ゲレンデから外れたところを自分の足で歩いて登って滑るので、気軽に始められるわけではないんです。もちろん、雪崩の危険もあります。


ー それでも、なぜ多くの人がバックカントリースキーに惹かれるのでしょうか?

河野:ゲレンデの中では滑れないような斜面や雪質を体験できたり、普段見れない景色を見ることができるからです。僕にとっては、ゲレンデの中で滑るスキーやスノーボードも非日常ではあったのですが、バックカントリースキーはさらに高い次元で自然を感じられるのが魅力ですね。


ー 登山の要素もあるのでしょうか?

河野:そうですね。クライミングスキンという滑り止めなど、今はギアも良くなっているので、ガイドをつければ誰でも登れるようになりました。滑るのは大変なので、スキーではなくスノーシューを履いて、ちょっとした森に入っていくという楽しみもできます。バックカントリースキーは、必ずしも高い山に登って滑るだけが楽しみ方ではないんです。

ー 野沢温泉では、どんな景色が楽しめるんですか?

河野:野沢はバックカントリーエリアがそれほど広いわけではないのですが、ブナの原生林の中を滑ることができます。動物の足跡があったり、ブナの木に熊の爪痕があったり、自然をいろんな意味で感じられる。そういうところも、海外からお越しの方にも日本の方も魅力だと思いますね。

観光協会の理事を務めて分かった野沢温泉の現状

ー 次に、野沢温泉の魅力についてお話しいただけますか?

河野:岩手に次いで、県としては2番目に大きい長野は、四季がはっきりしているのが特徴です。野沢では、12月頭からGWまでスキーを楽しむことができます。先ほど少しお話ししたように、最近では冬お越しになるインバウンドのお客様が多くて、42万人の観光客のうち、1/4程度は海外から来られる方です。


ー そんなに外国人観光客が多いんですね。

河野:日本はリフト券が圧倒的に安くて、雪質が良いのです。海外客に人気のスキー場は、北海道・ニセコ、長野・白馬と野沢温泉などです。白馬にはヨーロッパのアルプスのような3,000m級の山並みがありますが、野沢温泉にあるのは一番高くて1650mの毛無山です。野沢温泉スキー場ももちろん魅力的なスキー場ですが、それに加えて温泉街に13カ所の外湯があるんですが、そのすべてを歩いて回れるような温泉街のコンパクトさも魅力です。雪質と泉質の双方が良質でニセコや白馬とは、また違ったスノーリゾートの魅力がありますよ。


ー では、そんな野沢温泉で務めていらっしゃる観光協会の理事についてお話しいただけますか?

河野:理事は推薦で決まります。僕は1年半前に推薦をいただきました。実は、観光協会の理事の仕事の他に、お祭りの役や、消防団にも入っています。田舎はスローライフだと言われますが、実はそんなことはなくて、結構忙しいんです(笑)。もちろんやらないということも可能なのですが、地域の人たちとのつながりができたり、自分がいる分野以外の人と交流できるので、楽しみながら積極的にやっています。


ー 観光協会の理事を務めることで、何か気づいたことはありましたか?

河野:インバウンド客の割合のように、野沢温泉の現状を詳しく知ることができました。野沢の現状を知らないと、今自分がそこで行なっているビジネスの指標も立てられないので、勉強だと思って、色々と引き受けるようにしています。理事は10人いるんですが、僕が一番若いですね。


ー 後半に向けて、最後にふるさと納税のことについてお伺いしておきましょう。野沢温泉ではどのようなふるさと納税の返礼品がありますか?

河野:野沢温泉では、ふるさと納税は村が主導になって積極的に行なっています。ですので、僕は直接的には関わっていないのですが、返礼品には野沢菜や焼酎、日本酒など地元の名産を用意しています。それと、もちろんリフト券の返礼品やスキー場のシーズン券などがあるので、観光の部分では僕も間接的にふるさと納税に関わっていますね。


ー ありがとうございます。ここまでは河野さんのスキープレーヤーとしてのキャリアや、現在なさっているご活動についてお伺いしました。後半では、観光協会の理事として考えていらっしゃる野沢温泉の課題や、ご自身の目標についてお聞きします。 後編へ続く。

河野健児氏

Kenji Kono

1983年長野県野沢温泉生まれ。小学校から高校卒業までアルペンレーサーとして活躍し、2002年にフリースタイルスキー・スキークロスに転向。12年間、ナショナルチームメンバーとしてスキークロス世界選手権、ワールドカップ、X-GAMESに参戦。元全日本チャンピオンで、ワールドカップ最高位は4位。現役を退いた現在もスキーヤーとして国内外の山に足を運ぶ。故郷でもある野沢温泉村を拠点に、nozawa green field代表として一年を通して自然の中に身を置き、アウトドアスポーツの魅力を発信。また、野沢温泉村観光協会の理事も務めている。

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