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INTERVIEW

世界が一丸となって森を守れば、
地球の未来も守れる。
more trees代表 坂本龍一氏

— 後編 —

ANAが2009年にスタートさせたカーボン・オフセットプログラム。
航空機が排出するCO2を、豊かな森づくりによって埋め合わせるというこの画期的な取り組みは、
日本を代表する世界的音楽家、坂本龍一氏が代表を務める森林保全団体more treesとのコラボレーションによって実現しました。
さらに現在は、ANAの株主総会に使われる電力に伴い排出されるCO2のオフセットプログラムを実施しています。
今回は、「都市と森をつなぐ」というmore treesの取り組みについてお話を伺いました。

編集:大野重和 (lefthands) / フォトグラファー:川口賢典(stoique)

2020.05

「都市と森をつなぐ」ための取り組み

— 坂本さんは、都市を拠点にして森に出かけるというライフスタイルを送っていらっしゃいますが、more treesも「都市と森をつなぐ」ことをテーマにしているそうですね。

坂本:都会に住んでいる人は、自分たちの生活がどのように森と関係しているかについて、あまり気にしてもいないし、気が付いてもいないことが多いのではないでしょうか。でも、もしも森がなくなったら、文明全体が崩壊してしまうというのは、これまでの歴史が証明していることです。森は、人類が生きていくうえで欠かすことのできない非常に重要な基盤なんです。それに気が付いてもらうために、我々に何ができるのかということをいつも考えています。

more treesの活動を通じて得たお金を、森に還元するというのもそのひとつです。森を育てたり保全したりするのには、当然お金がかかります。日本の林業は、産業としては残念ながら低迷状態が長く続いていますので、そこにもお金の流れが生まれるように試行錯誤しています。経済活動と森林保全を繋ぐパイプができると、これまで都市に暮らしていて、森を遠いよその話と感じていた人たちにも、意識して考えてもらう機会がつくれるはずです。more treesを、人間とお金と森を繋ぐパイプのような存在に育てたいというのが僕の願いです。


— これまで、具体的にどういった取り組みをされてきましたか?

坂本:例えば10年ほど前から、中国からの輸入に頼っていた火葬用の棺に代えて、国産材を使ったデザイン性にも優れた棺をつくっています。デザイナーさんにアイディアを出していただき、カーボンオフセットにも、また国の林業の活性化にも繋がり、さらにデザイン性においても優れた「ecoffin」という名前の商品として展開しています。


— 国産材を用いた、木の製品づくりですね。日本の伝統工芸を次世代へと継承することにも繋がりますね。

坂本:銀座のサヱグサさんでは、親子一緒に参加する、大分県産の杉材を使った椅子づくりワークショップを開きました。いいデザインの家具は親子三代で使えます。使えば使うほど環境にいいし、年輪を重ねた家具を大切に使い続けることで心も生活も豊かになります。同時に、木の大切さや森の大切さにも気付いてもらえる。そういうことを色々と考えては形にしていっています。

他にも、六本木に岩手県の被災地で使われている本物の木造仮設住宅を展示して、大人だけでなく子どもたちに親しんでもらったりとか、国内あるいはインドネシアの森を訪ねるツアーも開催しました。あとは、これも森林保全に繋がる取り組みとして、カーボンオフセット・プログラムの実施にも力を入れています。事業を通じて排出するCO2の分だけ、森林保全活動に貢献するという考え方で、ANAさんにも飛行機が飛ぶ空の環境を考えるために、綺麗な空気に繋がる取り組みということで積極的にご参加いただいた経緯があります。

モノやコトを通じて森の魅力を発信する

— いま、目の前に積み木がありますが、こちらについても具体的に教えていただけますか?

坂本:more treesでつくっている「つみき」ですね。そもそもの話をしますと、高知県須崎市から山の方に上がると、梼原町(ゆすはらちょう)という場所があります。more treesと最初に提携してくれた町なのですが、総合庁舎が建築家の隈 研吾さんの設計でした。ずいぶん早くから建築を町づくりに取り入れてきたそうで、地元産の木材を用いた美しい木造建築が幾つもありました。林業の町ですから、そこをフォーカスするために戦略的に建築を取り入れてきたのでしょう。

隈さんが1980年代に活躍し始めた頃は、ポストモダニズム的なデザインをされる方だと思っていましたが、バブル経済がはじけた頃からは一転して、素材としての木の良さを生かし、デザインに取り入れるスタイルに変わりました。考えが共有できるところがあると思い、何かご一緒できないかと相談してみたのです。そうしてできたのが、宮崎県諸塚村のスギ材を用いて、地元の職人さんたちの手で仕上げたこの「つみき」です。さすが! と思いましたね。こんなシンプルな形なのに、ものすごく多様な形が、それこそ無限にできるのです。僕はそういう才能がないのですが、子どもたちに渡すと、とても面白い形をつくって見せてくれます。ここまでシンプルな物が限りない可能性を持っている。たいしたものだと感心しました。



— 我々のような都市で暮らす人間が、具体的に森林づくり、環境保全のためにできることはあるのでしょうか?

坂本:more treesが森を身近に感じてくれるための入口になればと思って努力しています。森の魅力を体験するための場やきっかけをつくったり、「つみき」のように、デザインされたプロダクトを通じて興味を持ってもらう。以前には、ヒノキオイルを扱ったこともありました。アイディア次第で、門戸はもっと広げられると思います。前に誰かから言われて心に響いたのは「消費は投票行為に等しい」という言葉です。


— なるほど、それはわかりやすい喩えですね。

坂本:例えば、世の中ではいろいろな種類の水が売られていますよね。そこからイタリアの水を買う人、富士山の水を買う人と、選択肢はいっぱいある。価格で言えば、どれも一律100円代くらいですよね。でも実際は、そこにかかっているカーボン・フットプリントというのはずいぶん違います。しかしそれは、プライスだけ見てたら、分かりにくい部分でもあります。意識の高い消費者だったら、この水はどこから運ばれて来たのか、地球の反対側から来たのなら、それだけ多くのCO2を吐き出してここにあるのだと気付くわけです。

もしも誰もがそういう意識になれば、おのずとCO2の排出量も下がってきます。だから自分も含めて、皆さんにもなるべく賢い消費者になっていただき、なるべく環境に良い方法でつくられていて、CO2の排出を減らせて、森林を保全することに繋がるような物を選んで買うようになってもらえたらと願っています。同じような物を買うなら、そうした観点から見ていい方を買うという考え方です。仮に値段がちょっと高くなっても、取り組むべき価値と意義のあることです。一人一人の小さな積み重ねが、気が付けば大きな差になって現れてくるので、ぜひ考えてみてください。

例えばふだん、何気なく買っている商品の裏の表示を見て、それがどこから来たのかと考えるような新しい習慣を始めること。誰もが、「ちょっと」の気づきと努力でできることから始めれば、世の中は変わると思います。

森に触れ、環境を考える人間を育てるには

— 森林保全は時間がかかるものですが、その取り組みを次世代に伝えていくにはどうすればいいのでしょうか?

坂本:学校で、もっと森林や環境について学ぶ場が設けられるといいですね。授業自体は教室の中でやるとしても、座学で勉強するだけではなくて、実際に森に出かけて遊んだりする体験が何より重要ではないでしょうか。

スウェーデンでは都市と自然の距離が近いこともあって、森の学校というものが実際に行われています。それに北欧、ドイツをはじめとするヨーロッパでは、週末に田舎に出かけて自然と触れ合うということは、ごく一般的な習慣です。アメリカでも多くの人が気軽にやっています。

ところが、せっかく豊かな森に恵まれた日本では、森に触れ、森に学ぶという教育が遅れている印象があります。大都市では少しばかり遠出になってしまいますが、地方都市でしたら身近で実践できる場所が沢山あるはずです。森に身を置いて、森を体験する。それを、子どものうちに経験するということが、特に大切ではないでしょうか。就職して大人になってしまうと、もう感性が固まってしまっていて、いきなり大自然の懐に飛び込むというようなことが難しくなってしまいます。



— 最近は若い人達がキャンプやバーベキューを楽しむようになり、森への関心も高まってきているようですね?

坂本:そうした身近な自然との触れ合いが、森を考えるきっかけに繋がると思います。我々も、もっと森との触れ合いに繋がるイベントを提案していきたいですね。


— ANAは、よりよい社会づくりに役立つ商品や体験サービスにスポットライトを当て、心ある生産者の商品を心ある消費者にお届けするべく活動を続けています。more trees とも、カーボン・オフセットプログラムで提携してきました。これからも一緒に、森を守る活動を通じて、サステナブルな環境づくりに貢献できればと思います。

坂本:more treesでつくるオリジナルプロダクトや、プロデュースする空間、さまざまなカーボン・オフセットプログラム、イベントやワークショップ、あるいはツアーといったものが、これからもANAさんの御目に適うように願っています。ANAさんが飛行機を飛ばす空と、我々が守り育てる森、それぞれ違うものではありますが、広い意味で同じ地球の環境を成す大切な存在です。

我々はこれからも、都市に暮らす人々に森の魅力を伝えていくことで、このかけがえのない地球の未来を考えるきっかけを与える存在になれればと願っています。

坂本龍一

Ryuichi Sakamoto

1952年東京生まれ。78年『千のナイフ』でソロデビュー。同年『YELLOW MAGIC ORCHESTRA (YMO)』を結成。散開後も多方面で活躍。映画『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞を、映画『ラストエンペラー』の音楽ではアカデミーオリジナル音楽作曲賞、グラミー賞などを受賞。環境や平和問題への言及も多く、森林保全団体more treesの創設、「stop rokkasho」、「NO NUKES」などの活動で脱原発支持を表明。また「東北ユースオーケストラ」など、音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動も行う。

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